14/15シーズン評価⑪ リオネル・メッシ
今回は「14/15シーズンの選手評価、メッシ編」についてのテーマです。シーズン前の期待、その達成感と実績、来シーズンへの期待という3つのテーマで考えていきます。
※点数はシーズンを通した評価の点数。10点満点で、6点を平均点とする。
■ 目次
選手自身の復活がバルセロナの強さに
近年のバルセロナは、良くも悪くもメッシの出来次第でチーム力が左右されるチームになってきている。どうしてもメッシの個の力は、バルセロナの躍進と世界でトップクラスに返り咲くためには絶対に必要な要素になる。
昨シーズンはメッシ自身に元気がなく、バルセロナのチーム自体もそれに伴い無冠に終わった感があった。体調不良、モチベーションの低下、ブラジルW杯の意識など様々な理由が挙げられたが、本当の原因はメッシ自身の心の中に。
昨シーズンのバルサファンからのブーイングもあり、昨夏にメッシ自身もバルサからの移籍を考慮したりと、メッシの時代は終わったかのように世間では捉えられていた。バルサファンの中にも、メッシを売りに出す最後のチャンスと思っていた人はいただろう。
最終的にメッシ自身が残留を望み、ルイス・エンリケ新監督もメッシの必要性を説いたことで、メッシが今シーズンまたバルセロナで全力を注ぐことが決定した。
バルサファンが一番心配しているのはプレー面であった。昨シーズンの運動量の圧倒的な少なさからくるボールへの関与の少なさ。体のキレが悪く、ドリブルで抜け出すシーンは激減。昔に比べると少しボテッとした感がある体など、心身ともにメッシはリフレッシュして今シーズンを迎える必要があった。
そして、バルサファンのあまりにも大きな期待に応える為にも、メッシ自身がかつての輝きを取り戻すための努力が今シーズンの最大の課題であり、バルサファンはそれに少しの疑念を抱きながらも期待した。
アシストからゴールから万能な怪物への成長、10点
メッシは開幕から元気に先発した。ルイス・エンリケ新監督の戦い方にも注目が集める中、バルサの前線は例年の3トップと少し形を変えていた。ワイドに開く両ウイングではなく、2トップの少し開いた形の後ろの真ん中にメッシが陣取る3トップだった。前線の3人がPAの横幅よりも広がらない戦い方に、バルサファンはこの戦い方の意図を速くも掴んだに違いない。
今季から加入したスアレスと、昨期加入したネイマールの得点力を活かす為の布陣であった。メッシへの得点の依存度を下げる効果と、他の二人の得点力にも期待した攻撃の形であった。そのルイス・エンリケの期待にメッシも応える活躍を見せた。開幕から数試合は怪我で出遅れていたネイマールが先発していないにも関わらず、メッシは前にいる2人にパスを送り続けた。それはあたかも、将来南米トリデンテが揃えばこの形で得点を奪えると確信しているかのように、アシストを連発した。今季のメッシのスタートは、ここ数シーズンにあった自分がゴールを決めるというよりも、周りに得点を取らせながらもチャンスがあれば自分もゴールを決めるという、得点力のあるアシストを好む選手のようであった。
プレースタイルを変更していることと、心身のコンディションでも改善が見られたメッシは、開幕からバルサの勝利に大きく貢献した。チームの快進撃の中心となり、メッシの復活をほぼ確実なものにしていた。
スアレスが制裁明けになるクラシコ付近では、自分が点を取るという昔の姿には戻ってはいたが、それを実現するプレーに不満はなかった。スアレスがバルサの流れに馴染めない中、リーガの3連敗とチームの雰囲気が悪くなりそうなリーガ第11節のアルメリア戦で、メッシはチームの勝利の為に1つの決断を下した。自分が昔のように右に入り、スアレスを中央にした方がチームが強くなると感じたメッシは、スアレスに「(中央に)そこにいろ!」と自分から中央の位置を離れ右のポジションに移った。この試合を見事スアレスの2アシストで切り抜けたバルセロナは、ここからこの3トップ(右メッシ、中央スアレス、左ネイマール)の形が定番になった。
そこから攻守のバランスを取るのに苦労はしたが、右に入ったメッシと左のネイマールの絶妙なコンビネーションを武器に、試合内容はそこまで良くなくても、尻上がりに調子を上げながら去年の戦いを終えた。
今年に入ってからの唯一のピンチとなる年明けのソシエダ戦で、チーム練習への合流が遅れたメッシはリーガで初めて先発を外れた。チームは試合内容で惨敗し、後半から投入されたメッシとルイス・エンリケ監督の間には大きな亀裂が生じた。次の公開練習をメッシが欠席するなど、最終的にそこからシーズン終盤まで一言も話さなかったとも言われた。
1月には昨期勝てなかったアトレティコとの試合が3つ(リーガ1、国王杯2)もあり、チームの雰囲気と試合内容にバルサファンは、ネガティブにその試合を迎えるしかなかった。1つ目の対戦であるリーガでのカンプノウ決戦で、バルサファンはバルセロナの底力の強さを見ることになった。
かつてのような両ウイングに開いたメッシとネイマールの個人技を中心に、アトレティコの中盤の守備組織を個の力で粉砕した。ネイマールの絶好調もあったが、メッシの右からのドリブルは縦と中に変幻自在で、左足を切る守備組織では対応できない破壊力があった。試合内容でも完勝したバルセロナは、1月の間このネイマールとメッシの個人技で勝ち続けた。
2月に入りネイマールの無双状態は終わったが、メッシは多くの時間で怪物ぶりを見せる活躍を見せて、チームの連勝に貢献した。重要な局面を迎えるシーズン終盤戦に向けて、メッシへの心配事は何一つなくなっていた。バルサファンはメッシを含めた南米トリデンテが揃えば負けるわけがないという圧倒的な自信というより、確証めいたものが出始めていた。
CL決勝トーナメントに入っても、前線の南米トリデンテを中心にバルサは勝ちに勝ちまくった。シティ戦やパリ戦では現状のチーム力の違いをはっきりと証明する強さを見せ、その中でもメッシのプレーは別格の違いを見せていた。かつての、メッシがいれば絶対勝利出来るという保険が付いているほどバルセロナの強さを高めた。
リーガでは首位に返り咲いて迎えていたクラシコで勝利したことで勝ち点差が4になり、残り10試合があれども、メッシを中心に構成された南米トリデンテが怪我でもしない限り、バルサの優勝は間違いないと思えるほどバルセロナは強かった。
そしてCL準決勝のバイエルン戦では、メッシはかつての指揮官を粉砕した。中盤での激しい主導権争いをしていた中、疲れが見え始めた後半の終盤に個人技からの2得点を記録。さらに試合終了間際にはネイマールへのアシストも記録し、1stレグで事実上決勝進出を決める活躍を見せた。
ここからはリーグ戦の優勝のかかるアトレティコ戦で決勝点を決めたり、CL決勝のユベントス戦では勝ち越しゴールの起点になるなど、メッシの活躍はバルセロナの強さとイコールの状態であった。
今シーズンはゴールだけでなく、アシストでも多くのパスを供給した。また、中盤に下がってのゲームメイクでも中盤の構成を何度も助けた。ドリブルでも止められない存在に復活し、攻撃面では多くの責任を背負いながら、毎試合決定的な存在であり続けた。
メッシはチーム最多の58ゴールを記録し、最終的にはリーガでスタメンを外れたのは年明けのソシエダ戦だけであった。大きな怪我や体調不良もなく、シーズンをほとんどフルで戦い続けた。今シーズンの活躍でメッシは完全復活と共に、改めて末恐ろしい選手だとサッカー界に証明した。
ただただメッシの活躍と共にバルセロナの躍進に期待
一度完全に復活したことで、メッシへの心配事は年齢によるフィジカルの衰えぐらいしかないように感じる。今シーズンの活躍で、メッシが再びストイックにサッカーに励むことが出来ることが証明された。
体のケアには食事改善を取り入れて体のキレが復活した。これだけ勝利してもタイトルを獲得することへの飽きがなく、さらに毎試合での得点への貪欲さも衰えない。心身ともに心配事は全くなく、怪我や病気で欠場しない限り毎試合出場し続けてくるだろう。
後は、このバルセロナの栄光の強さの時間をただ楽しむだけのように感じる。来季はメッシを含め南米トリデンテ対策されるだろうが、ほとんど止めようがないようにも感じる。メッシの活躍と共にバルセロナがタイトルを獲得するのを、来期もメッシには期待。コパ・アメリカでも代表のタイトル獲得に頑張れ( `ー´)ノ