《質問》バルセロナはなぜSBからのアーリークロスを上げないのでしょうか?

コメント欄に質問があったので回答したいと思います。

『ラテラルからのアーリークロスを使わないのはなぜでしょうか?

バルセロナはほかのクラブに比べて圧倒的にSBからのアーリークロス(ハーフライン付近からのクロス)が少ないと思います。なぜでしょうか考察を聞かせてもらえると嬉しいです。

私の考えるアーリークロスのメリット、デメリット

メリット
・スアレス、パウリーニョのヘッドのゴールが期待できる
・中央に集中した相手ブロックの幅が広がりが期待できメッシ、イニエスタ、コウチーニョのドリブルスペースが得られる

デメリット
・J.アルバ、S.ロベルトのクロス精度があまりよくないのでゴールの期待が低い
・単純にポゼッション率が下がる』

貴重なコメントありがとうございます。コメント欄は記事の下部にあります。質問・疑問点だけでなく、思ったことなど何でも書いて頂けるとありがたいです。

ほぼこのメリット・デメリットは合っていると思いますよ。バルサは特殊なチームで、他のチームがやってもバルサはしないということがあるので、回答していきますね。

 

見解・回答

1で「バルセロナは戦略面からアーリークロスはあげない」

2で「パスをつなぐ、アーリークロスを上げるは両立できない!?」

3で「バルセロナは基本パスをつなぐチームでしませんが、その戦い方を考慮してもOK」

4で「まとめ」

について書いています。

 

1、バルセロナは戦略面からアーリークロスを上げない

・「戦略=なにをしないか決める!」

サッカーにはよく戦術という言葉が使われます。あのチームの戦術は~、戦術眼などです。

戦術という言葉は使われますが、戦略という言葉はあまり使われませんね。

戦略というのはシンプルにいってしまえば、「なにをしないか決める!」ということです。これ凄い重要です!

戦略から戦術は基本的に考えられるものなので、バルセロナは戦略のところで自分たちがなにをしないかを決めています。

多くのチームは監督のアイデアでこの戦略が決まりますが、バルセロナはクラブとしてこの戦略が決められていますね。

 

・バルセロナの戦略は、ハイボールなど中盤を省略するサッカーはしない

バルセロナの戦略は、ハイボールなど中盤を省略したサッカーはしない。

言い換えれば、ボールはなるべく腰より下の位置の足でプレーし、頭を超えるキックは極力しないということです。

戦略はなにをしないか決めると言いましたが、バルセロナはパスをつないで戦うチームです。

パスを細かくつないで攻撃しようとするサッカーの中では、アーリークロスは基本的にオプションとして入ってきません。

バルサのSBが高い位置でボールを持っても普通にクロスを上げると思ってFWは準備しませんし、それがバルセロナのやり方です。

まずはバルセロナは戦略という、なにをしないか?という部分で、アーリークロスを上げないということが理解できたと思います。

次からは、プレー面からみてもアーリークロスがバルセロナにとって非効率であることを説明します。

 

2、パスをつなぐ、アーリークロスを上げるは両立できない!?

・パスをつなぐと、アーリークロスは反対のサッカー

先に言ってしまいますが、パスをつなぐサッカーとアーリークロスは、攻撃としては反対の攻撃です。

パスをつなぐサッカーは中盤でボールを支配して攻撃するサッカーですが、アーリークロスは中盤を省略してゴール前に上げるサッカーなので、戦い方が違いすぎます

パスをつなぐサッカーでは、パスをつなぐためにボールを持った選手以外に、近い距離でボールを受けるためのサポートを少なくても2人、多くて4人ほどいきます。

すなわち、ボールから近い距離に選手が密集しながらプレーすることを意味します。

対してアーリークロスを上げれば、ゴール前にボールを蹴るということで、人はゴール前とセカンドボールを拾うために人数を割くので、ボールを持ったSBにサポートはほぼいりません。

パスサッカーをしようとすればボールから近い距離に選手が多くおり、アーリークロスならボールから遠い距離に選手がいる必要があります。

これはもう反対の攻撃サッカーといっても良いほど、やっていることが違い過ぎると思っています。

 

・両立は極めて難しく、やるなら選手で使い分ける

僕はパスをつなぐサッカーとアーリークロスを上げるサッカーの両立は、極めて難しいと思っています。

上記でも説明しましたが、選手の配置方法がまったく違うので、パスサッカーをしながらアーリークロスも上げるのは、相当な状況判断とチームの成熟度が必要だと感じます。

状況を踏まえてゴール前やセカンドボールに動いたり、パスをつなぐためにサポートに動いたりと、難易度が高すぎです。

これをするには同じメンバーで最低3年は一緒にプレーして、その選手がボールを持てばどんな考えでどんなプレーをするか予測できないと無理だと思います。

現代サッカーの移籍市場で3年も同じメンバーで戦うのは難しいですし、試合が多いこともありローテーションして戦うことも考慮すれば、不可能レベルなのかなと…。

もちろん両方トライして戦うことはできますが、どちらも中途半端に終わってしまう気がします。

また、今のバルセロナのSBセルジ・ロベルトやアルバが急にスアレスめがけてアーリークロスを蹴りだしたら、間違いなくメッシが爆ギレしだします(笑)

「そんなボール蹴らずに、パスをつないで運べ!」という感じに。

もしやるのなら、時間帯や選手の起用や試合状況によってはアリかもしれません。

バルサも負けている試合では終了間際になればピケが最前線に上がってハイボールを蹴りますし、これはアリだと思います。

また、中盤でのパス回しが期待できずにパワフルな選手をスタメンにそろえた時など、アーリークロスを蹴った方が得点する可能性が高いと判断すれば、SBからシンプルにクロスを上げる戦いはアリだと思います。

その代わりバルサは普段ハイボールを蹴ったりするチームではないので、このパターンならメッシは消えてしまい、練習不足もあって相当お粗末な戦い方にはなってしまうという現状ではあります。

 

・パスをつなぐ、アーリークロスなどのハイボール、勝率が高いのはパスをつなぐ

ここまでバルセロナがアーリークロスを上げないのは、戦略面とやるサッカーが違い過ぎるからと説明してきました。

もう少し戦略面で付け加えるなら、バルセロナは監督や選手にアーリークロスで得点を取ってくれる人材は考えていない(獲得していない)はずです。

バルセロナのFWで言えば「こいつゴール前の走り込みとヘディングがすごいから、アーリークロス上げたら15点は取るぞ!」とフロント、テクニカルスタッフ、選手、バルサファンで話す人はいないでしょう。

そのアーリークロスという攻撃をバルサは捨てて、パスをつなぎ足元がうまい選手をかき集めて攻撃しようとしています。

バルサはパスをつなぐサッカーをするとクラブで決めており、そのための監督や選手を集めているので、パスサッカーを実践しているだけです。

パスサッカーをする選手を集めているのに、アーリークロスを上げても勝率は低いと思います。勝率はおのずと、パスサッカーの方が高くなります。

攻撃が得意な選手に守備をさせても効果が薄いように、バルサは戦略面から今のパスサッカーをしているので、アーリークロスという攻撃のオプションは増えないと思います。

 

3、バルセロナは基本パスをつなぐチームなのでしませんが、その戦い方を考慮してもOK

・アーリークロスをするなら、前線だけでなく中盤にもそういう選手をそろえる

ここまでこうやって書くとアーリークロスをダメなのかと思う人もいるかもしれないので、アーリークロスはとても有効的な攻撃のひとつだと思います。

イタリアではまだまだロングボールやアーリークロスから得点は多く入ります。イタリアは前線に背の高いCFが好きな国なので、理にかなった戦い方です。

アーリークロスを上げるなら、ボールが入るターゲットマンだけでなく、中盤の選手にもそれに合う選手を配置したいですね。

ゴール前に入るスタミナやダッシュ力、フィジカルコンタクトに負けないフィジカルの強さ、ダイレクトでミドルを狙えるシュートの上手さやパワーなどが挙げられ、代表的な選手はチェルシーで活躍したランパードです。

ランパードはおそらくパスをつなぐサッカーでは一流ではないと思いますが、こういうアーリークロスを上げるチームなら超一流です。

チェルシーではドログバといったターゲットマンがいて得点を量産していましたが、イングランド代表は戦い方が中途半端で、ランパードの活躍が少なかった印象です。

アーリークロスを上げる戦いをするならそれはOKで、そのための戦い方や選手を選択すればいいと思います。クロスを上げる選手の精度もとても重要ですよ。

 

・両立したクラブは黄金期のマンU、右のベッカム、左のギグス

これまでパスサッカーとアーリークロスを両立するのは極めて難しいと書いていきましたが、両立していたと思うのはファーガソン監督率いる黄金期のマンチェスター・ユナイテッドです。1990年代後半から2000年代前半にかけてのチームです。

このチームはSBではありませんが、右のベッカムがボールを持てばゴール前に鋭いアーリークロスを上げまくり、左のギグスは縦に突破と、左右で役割が完全に分かれていました。

中盤ではロイ・キーンやスコールズといった選手が左右にパスを散らし、イングランドらしくスピーディーながらも、攻撃にバリエーションが多かったと思います。

SBもベッカムやギグスを追い越して攻撃する機会も多く、サイドの崩しの攻撃も多彩でした。

左右で役割を完全に分けられていることで成功し、また、同年代でユースから長くプレーした選手たちが多かったことが両立できた要因なのかもしれません。ベッカムのクロスの精度がすさまじかったのも大きな要因かも。

やはりというかこういう視点から見ても、黄金期のマンUはすごいチームなのかなと感じます。

 

4、まとめ

・バルセロナは戦略面からアーリークロスを上げない

・パスをつなぐ、アーリークロスの両立が難しいことからバルサは上げない

・もし両立するチームがいたら黄金期を迎えているかもしれません

 
 

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